以前「朗読での間(ま)と緩急でこれだけ変わる」という記事で、一部分を少しかえるだけで、印象が変わる、ということを書きました。
今日は、「語尾」を変えるだけで、これだけ変わる、ことを詳しく紹介します。
語尾に関しては、今までにも
「朗読が暗く聞こえる要因」
「朗読のセリフで喜怒哀楽を表現するコツ」でも語尾の読み方で印象が変わることを紹介しています。
また語尾のくせについても
「朗読の助詞上げのくせを直すコツ」でふれています。
このように「語尾」の扱いは案外難しいのです。
私がナレーションをするときに、いつも難しく感じるのが語尾の扱いです。
実は語尾の扱いひとつで、全体の印象が全く変わるのです。
ということは、語尾の扱いで全体の印象を変えることができるのです。
これはナレーションだけではなく、朗読でも、日常生活でも同じです。
かなり細かい話になっていきますが、チャレンジしてみてください。
なお、今回「語尾」と呼んでいるのは、助詞や文末もすべて含めて、語尾と呼んでいます。
では、本日の題材です。
和尚の室を退がって、廊下伝づたいに自分の部屋へ帰ると行灯がぼんやりともっている。片膝を座蒲団の上に突いて、灯心を掻かき立てたとき、花のような丁子がぱたりと朱塗の台に落ちた。同時に部屋がぱっと明かるくなった。
夢十夜 ~第二夜~ 夏目漱石
語尾をすべて下げると、落ち着いた雰囲気になる
以下の文章の下線を引いている部分に注目して、音声をお聞きください。
「和尚の室を退がって、廊下伝づたいに自分の部屋へ帰ると行灯がぼんやりともっている。」
下線部分を「下げて」読んでいます。
語尾をすべて下げると、聞き手の印象としては、「落ち着いた」「まじめ」「暗い
」などに聞こえます。
語尾をすべて上げると、明るい雰囲気になる
今度は、語尾をすべて上げて読んでみます。
同じく上記文章の下線部分に注目してお聞きください。
いかがですか?
同じ文章なのに、助詞を上げると、明るい雰囲気に聞こえませんか?
語尾(助詞)は、文章のまとまり・流れで上げ下げを決める
すべての語尾を上げてばかり、下げてばかり、で朗読することはあまりないですね。
実際には上げたり、下げたり、を混ぜて使います。
上げる、下げる、の使い分けは、文章のまとまりや状況で考えましょう。
例えば
「自分の部屋へ帰ると行灯がぼんやりともっている」の部分。
「部屋に帰る」「行燈が~」はまとまりとして別々だ。
部屋に帰ってから、行燈に気付くまで時間がかかっていると考える方は
「部屋に帰ると(↓)行燈が~」の「と」を下げて読みましょう。
そうではなく、「部屋に帰る」「行燈が」はひとつのまとまりだ。
部屋に帰ってすぐ行燈に気が付いた、と考える方は
「部屋に帰ると(↑)行燈が~」の「と」を上げて読めばいいですね。
「と」の部分に注目して次の音声をお聞きいただき、
「と」の言い方ひとつで、伝わってくるイメージが違うことを感じてください。
2つ音声が続きます。
今度は、文末の語尾だけに注目してみましょう。
語尾(文末)を上げると「続く」「未来」の雰囲気、下げると「完了」「落ち着き」の雰囲気
以下の下線部分に注目して、お聞きください。
同時に部屋がぱっと明かるくなった。
音声が2つ続きます。1つ目は上げたバターン。2つ目が下げたパターンです。
いかがですか?文末を上げると、「明るい雰囲気」「未来」「続きがある」などをを感じます。
下げると、「落ち着いた雰囲気」「完了」などを感じますね。
語尾(文末)は、どういう雰囲気で次の文へつなげたいかを考え、上げ下げを決める
「~行燈がぼんやりともっている。片膝を座蒲団の上に~」の場合
「~がぼんやりともっている」のあと、その行燈がどうなったのかを期待させたい場合や、次に続く雰囲気を出したい場合は「ともっている」の「いる」を上げて読みましょう。
「ともっている」の「いる」という部分に注目して音声をお聞きください。
「行燈がともってそれでいったん完了」という雰囲気を出したい方は
「ともっている」を下げて読みます。
同じく「いる」の部分に注目してお聞きください。
いかがですか?
語尾に「いる」のところを変えただけで、2つの音声から伝わるイメージは全く違って聞こえますよね。
まとめ
聞き手に伝わる印象
語尾(助詞)を下げると「落ち着き」「暗い」などの雰囲気
語尾(助詞)を上げると「明るい」などの雰囲気
語尾(文末)を下げると、完了の雰囲気
語尾(文末)を上げると、続き、未来の雰囲気
使い分け
助詞は、文が続いていると思うときは「上げる」
文が続いていないと思うときは「下げる」
文末は、期待、未来などを感じさせたいときは「上げる」
完了を感じさせたいときは「下げる」
たくさん紹介しました。
無意識に扱っている語尾も、意識的に変えることで、朗読全体の雰囲気を変えることができます。
自分の読みたい雰囲気に合わせて、語尾をあげる、下げる、を使ってみてください!
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